秋田 星耕硝子のこと

秋田県には武家屋敷で有名な角館があります。
春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色、と絵になる風景のある町で、観光に訪れる人々も多く、また、樺細工やイタヤ細工などの素朴で美しい工芸品がいまでも生産されている土地でもあります。

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その角館からほど近く、仙北平野の田園地帯が広がる一角に、伊藤嘉輝さんと亜紀さんご夫婦が営む星耕硝子はあります。

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青い屋根がちらりと見えてきました。

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ご自宅の納屋を改造して右半分が工房、左側上部がショールームになっています。
作業を終えた夕方、照明を落とされた工房に、ガラスを溶かす炉が赤々と光っているのがみえるでしょうか。

今日は、吹きガラスの工程を簡単にご紹介します。

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約1200℃でどろどろに溶かされたガラスをステンレスパイプの先に巻き取ります。ここから絶えず回しながら形の芯をとります。

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息を吹き込み、ガラスを徐々に膨らませます。
そして、この方が伊藤嘉輝さんです。

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(息を吹き込む口の部分)

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まっかに光るガラスは、もちろん直接手で触れる事はできません。
分厚く紙を重ね水を浸した紙リンや、巨大ピンセットのようなハシ、木板などを使って形づくります。

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(道具は全て作業しやすい位置と向きで並べられています)

また息を吹き込む、ガラスをさらに巻き取るなどして、だんだん目標の大きさと形に近づけて行きます。

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ラグビーボール型に成形したガラスを金型に差し入れ、モールと呼ばれる模様を付ける事もあります。

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(この金型に一度押し付けるだけで、あの柔らかな模様がうまれるなんて・・)
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(この柔らかな模様)

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この時は珠足付きのワイングラスを作っていました。
違う色のガラスの珠、足の順番に付け足し、成形していきます。
神経を使うこの瞬間、真剣な眼差しにはっとします。
通常ガラススタジオでは複数人で製作することがほとんどで、様々な補助作業を必要とするものですが、伊藤さんは全てをひとりでこなしています。

単独での吹きガラスの技法は、倉敷ガラス小谷真三さんが第一人者とされています。
民藝ガラスの先駆者であり、唯一無二の個性を持ちながら一職人として作り続ける小谷真三さんに憧れた伊藤さんも研究を重ね、技術を習得したそうです。
冷たく硬い質感のガラスを温かく柔らかく感じさせる。
その不思議な技術も受け継いでいるように、私には思われます。
そしていまやそれは伊藤さんの魅力的な個性となっています。

コップの口当たりの柔らかさ、
手に持ったときの肌になじむ有機的な触感には、本当に感動させられます。

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(珠足をハシで成形)

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底側の成形が済んだら、今度は口の成形をするためにポンテ付けをします。
別のポンテ竿(ステンレスパイプ)にガラスを巻き取り、底に仮付けすることです。
ぽろっと取れたら大変。
でも最後にはちょっと叩けばぽろっと取れなきゃいけない。
難しそうです。。

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口を広げ、大きさを決めてカット、仕上げ成形をして。

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最後にポンテを外した跡をバーナーであぶって滑らかにしたら完成です。
この一手間、使う人の事をよく考えている伊藤さんらしい仕事です。

長くなってしまいました。
続きははまた次回・・

手しごと 山藤

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「 星耕硝子 / 伊藤嘉輝の仕事 」

開催期間:9/17(土)〜9/26(月) 11:00~19:00
※火曜日は定休日のためお休みです。
開催場所:手しごと / 東京都世田谷区等々力4-13-21 等々力市川ビル1F

伊藤嘉輝さんギャラリートーク(手仕事フォーラム公開学習会)
開催日時:9/17(土) 15:00より
席に限りがございますので、参加ご希望の方は事前にこちらよりお申し込み下さい。
お電話でも承ります。03-6432-3867