みなさんの毎日の暮らしで使っているものの中に
「民藝」 のものはありますか?
手仕事のもの、自然素材のものはあっても民藝かどうかはわからない、きっとそんな方が多いはず?民藝とは何でしょう?
「民藝」という言葉は「民衆的工藝」の略で、思想家の柳宗悦によって作られた造語です。
柳はそれまで下手物とされてきた、庶民が使ううつわや生活道具の中に、美的価値を見出しました。美術品ではない無名の工人が民衆のために作る日用雑器、そこに初めてスポットライトをあて、美を見いだしたのが柳宗悦であり民藝なのです。こうした新しい美の基準の発見はとても画期的なことでした。
柳が定義した「民藝品」の条件に下記の8つがあります
実用性:観賞のためではなく、実用性を備えていること
無銘性:無名の職人によってつくられたものであること、
名をあげるための仕事でないこと
複数性:民衆の需要に応じるため、数多くつくられたものであること
廉価性:民衆が日用品として購入できる、安価なものであること
地方性:色、かたち、模様などに土地の暮らしに根ざした地域性があること
分業性:量産を可能にするため熟練者による共同作業でつくられていること
伝統性:先人が培ってきた技術や知識の蓄積にのっとっていること
他力性:個人の力よりも気候風土や伝統などの他力に支えられていること
ひとつのものの中に、伝統や地域性、実用性、作り方、実にさまざまなことを見ようとしていたことがわかります。
さらに、柳はこの民藝を生み出している手仕事の価値を高め、この新たな美の基準を世に広めようとします。濱田庄司、河井寛次郎、バーナード・リーチら、柳の思想に共鳴する工藝作家とともに全国各地を回り、その土地のものを調査・蒐集し、工人達をも指導したのです。こうした柳らの活動は「民藝運動」と呼ばれ、この運動は東京・駒場の日本民藝館の設立へと結実します。
現代の暮らしを考えた時、柳らが見ていた大正から昭和にかけての日用雑器や道具をみつけること、あるいは現代のものの中に民藝のものを見出すことは非常に難しいことです。
工業技術の発展やライフスタイル・環境の変化によって、民藝のものはとってかわられ、民藝を生み出した多くの手仕事が時代とともに廃れてしまっています。
でも、これはある意味ではこの時代に生きる我々が手仕事のものを選択してこなかった結果ともいえます。民藝店「手しごと」の開店にあたり、民藝にかかわる私たちが出来ることはなんだろう? と考えます。
今なお、優れた手仕事を続けているつくり手は全国各地にいます。一方で手仕事に魅力を感じるつかい手も増えていると感じます。まずは、手仕事によってつくられるものの美しさや、そのものが生みだされる背景を伝え、知ってもらう。それを取り入れた暮らしの素晴らしさを提案し、それを感じて使ってもらう。
つくり手とつかい手をつなぐこと、これが我々の使命だと感じています。
民藝は、まず使うことから。
朝飲む一杯の水を柔らかな手吹きのグラスで、
毎日の食卓には手のぬくもりが伝わる彩りのあるうつわを、
使うことで味わいが増す自然素材によってつくられたカゴやザルを
“ 健全で健康的な手仕事の品々 = 民藝 ” を暮しに取り入れてみませんか?