日本を代表する民陶の里として注目される小鹿田焼。
昔から現代まで一貫した手作業で
日常の雑器としての焼き物をつくっている。
白い化粧土と、飛び鉋、刷毛目などの特徴的な模様。小鹿田焼(おんたやき)は、近年日本を代表する民陶の里として注目され、器を扱う店でも見かけることが多くなってきた産地の1つです。
大分県日田市の山中、小鹿田皿山といわれる集落で小鹿田焼は作られます。福岡県の小石原村(現在の福岡県朝倉郡東峰村)から陶工をまねいたことから始まり、 集落にある14軒のうちの10軒の窯元が、300年以上もの間、開陶以来変わらない素朴な日用雑器を作り続けています。皿山を訪れると、きこえてくるの が、「ギィィ、ゴトン」という音。唐臼という川の水流を利用し、てこの原理で陶土を細かく砕くしくみです。小鹿田の象徴ともいえる、この唐臼の音が昼夜を 問わずリズムを刻み、小鹿田の風景を形作っています。
小鹿田焼で使われる土はすべて集落周辺のもの。採土場からとってこられた土は、この唐臼で2週間かけて粉砕されます。そのあと、水で濾して不純物を取り除き、乾燥まで含めて2カ月間かけて土がつくられるのです。土づくりが分業化された他の窯場では見られない光景です。
集落の中心にある8房の共同窯は、現在10軒ある窯元のうち5軒によって年5回ほど窯焚きが行われています。土だけでなく燃料となる薪も地域で調達し、ま さに小鹿田皿山という場所が小鹿田焼を生み出しています。小鹿田皿山では、こうした土の採集から土づくり、ろくろ成形、窯焚きまでを家族で行い、弟子や職 人をとらない一子相伝の原則が開業以来続けられています。1995年には重要無形文化財の保持団体としても登録されています。昔からの面影や伝統を残し、 健やかな仕事がつづけている、まさに民藝のふるさとと言えるような場所なのです。